「宅建士? それ、やめとけ!」
「宅建士? それ、オワコン!」
そんな声をよく聞きますが、果たして本当でしょうか?
不動産業界の現実には厳しい面が多いのも事実。しかし、だからこそ挑戦しがいがあるのもまた事実です。今回は、宅建士の道がどうして「きつい」と言われるのか、具体的な理由を紹介します。

●この記事を書いた人
サイト管理人:宅建士
不動産会社に勤務してた人。経験談をもとにお話します。
「宅建士はやめとけ」「宅建士きつい」「宅建意味ない」と言われる理由については、大きく首を縦に振る部分もありますが、いっぽうで厳しさの中に潜むチャンスや楽しさがあるのもホントです。
宅建士が「やめとけ」「きつい」と、言われる理由7つ

宅建士が「やめとけ」「きつい」と、言われる7つの理由について、私の独断と偏見と経験談をもとに解説します。
宅建合格までの勉強がきついから、やめとけ
「宅建は試験勉強が大変」
「独学がきついから、やめとけ」
と言う人がいます。確かに、その通り、that's rightです。
宅建のの試験日は、年にたった一回きり。
試験範囲は広く、法律や税務など慣れない分野も学ぶ必要があるため、試験勉強へのプレッシャーで途中で挫折してしまう人がいるのも事実です。
そして、宅建の合格率は15%〜17%と、微妙に低い割合。
……ですが実際のところ、この「合格率15%程度」という数値は、そこまでハードルが高い割合ではありません。
なぜなら、この合格率には、宅建試験を会社の方針で無理やり受けさせられている人や、あまり準備をせずにノー勉で受験する人も含まれるからです。
ですので、しっかりと対策を立て、計画的に宅建勉強を進めれば、十分に合格のチャンスがあります。

コツコツ学べば、ちゃんと合格できる
最近は、宅建通信講座や模擬試験など、独学者でも効率よく勉強できるツールが豊富に揃っています。自分のペースで学びたい人は、次の記事も参考にどうぞ。
不動産業のノルマがきついから、やめとけ
「不動産業は、営業ノルマがきついから、やめとけ」と言われます。
確かに、不動産業界は成果主義が強く、売上や契約数に対するノルマが厳しい企業が多い印象があります。
新規開拓や顧客との交渉、契約をまとめるまでのプロセスは、精神的にもハードで、ノルマを達成できないときにはプレッシャーがのしかかり、胃がデロデロに溶けます。
そのため、ノルマをこなすのが難しく感じ、やめたくなる人もいるでしょう。
こればかりは、本人の性分にもよるので何とも言い難いですが、ノルマによるプレッシャーや、人に物を売る――不動産を紹介して契約してもらうのが苦手な方は、確かにやめておいたほうがいいと思います。
宅建士に合格すれば、営業成績が伸びるわけでもないため、営業の勉強は、別途、積み上げる必要もあります。
ただし、宅建が使える仕事は不動産業営業職以外にも存在するので「ノルマはイヤだけど、土地や建物には興味がある」という場合は、不動産業界以外で宅建士として活躍するのもありです。
不動産業以外で、宅建士免許を活用できる仕事については、次の記事も参考にどうぞ。
不動産業の仕事内容がきついから、やめとけ
「不動産業(とくに営業職)は、仕事内容がきついから、やめとけ」とも言われます。
……などなど、ざっとあげただけでも一般的な企業とは違う面が見えてきます。
営業職の場合は、土地や建物に見込み客を案内するため、外での業務が多くなったり、道をしっかり覚えなくてはいけない、長時間の運転など、思いのほか体力勝負な面も出てきます。
加えて、営業社員同士の「俺の客を取ったな!」「いいや、あの客は私だから契約してくれた!」みたいな「社内でのバトル」も待ち受けている場合があり、気が休まりません。
宅建士の独占業務がきついから、やめとけ
「宅建士の独占業務はきついから、やめとけ」――と言われるケースもあります。
宅建士だからこそ可能な業務は、次の3点です。
3つの独占業務は、たとえ不動産会社の社長であっても、宅地建物取引士の資格を持っていない限り行うことはできません。
これらの業務は、不動産取引において、法的に重要な役割を担います。
土地や建物を売買、あるいは賃貸しようとする人が想定外の損害を受けないように、契約の前には宅建士が、取引対象の土地建物について、しっかりと説明をします。
重要事項の説明時は、法律や物件情報を正確に伝えなければならず、ミスは許されません。
加えて、通常の営業や接客、事務作業に加え、これらの独占業務をこなさなければならないため、時間的にも精神的にも負担が大きいです。
さらに、会社内で宅建士資格を持っている人が少ない場合、他の社員から宅建士しかできない業務を依頼されます。
重要事項説明や契約手続きの確認を任されることで、自分の仕事が後回しになるので、繁忙期などは、「自分の仕事が回らないよう、ウァワアァァァァン……」と泣きたくなるケースも出てきます。
とはいえ、宅建士の独占業務をこなしていくことに、やりがいを感じる瞬間は多いです。
自分の資格と知識が活かされ、取引の信頼を支える中心的な役割を果たしているという実感は、この仕事ならでは。お客様の信頼を得て、契約が無事に成立したときの達成感は格別です。
きつい部分は確かにありますが、その分、他の社員ではできない重要な業務を任され、自分の成長を実感できる機会も多いのが宅建士の魅力です。
宅建士合格後も、知識や免許の更新が必要だから、やめとけ
宅建士として働くには、常に最新の法律や規制に対応する必要があります。
不動産関連の法律や税制、民法は頻繁に改正されるため、宅建合格後も継続的に勉強をして、最新情報をインプットしておかないと、業務でトラブルになるリスクがあります。
さらに、宅建士は定期的に免許の更新も義務付けられており、宅建免許の更新時には講習を受けなくてはいけません。
宅建免許を更新するための講習には時間もかかり、免許の更新費用も発生するため、取得後も手間がかかるのは事実です。
こうした理由から「宅建士はやめとけ」と言われるケースがあります……が!
実際は宅建の資格を持っていることで得られるメリットも大きいです。
企業によっては、宅建士資格を持っている社員に対して資格手当が支給されるため、収入がプラスアルファになります。
免許の更新料を差っ引いても、資格手当でじゅうぶん稼げるケースも多いです。
また、宅建士資格があることでキャリアアップのチャンスが広がり、自分のスキルが向上するなどのメリットも!
宅建士であれば、資格手当やキャリアアップのチャンスを活かして、実力を発揮できる環境が待っています。
宅建事務はいろいろ大変だから、やめとけ
宅建事務とは
簡単に言うと「宅建を持った事務員さん」
不動産会社で宅建士として事務サポート業務を行う職種――「通称:宅建事務」は、わりと人気の職業です。
宅建事務の主な仕事は、契約書や重要事項説明書の作成、物件資料の整理や作成、店内掲示物の作成、インターネットの物件募集サイトのメンテナンス更新、電話応対、接客応対、お茶出し、店内の清掃など、多岐にわたります。
営業ではないのでノルマとは無縁で、パートタイムでも働ける柔軟さがある反面、業務の幅広さから大変さを感じ「きつい」「やめとけ」と言われる場合があります。
例えば、契約書類の作成や重要事項説明書の準備は、細かい確認作業が多く、法律に関わるためミスが許されません。
責任は重大なのに、事務職のため年収は営業マンよりも高くないことがほとんどで「割に合わない」と嘆く人も多いです。
営業マンのサポートも求められますが、営業が5人いる中で事務が1人の場合、複数の指示が飛んできてイライラすることもあります。

これ、コピーしといて~

物件資料、なるはやで作成お願い~

今から僕のお客さんが来るので、受付対応よろしく~

重説、お願い~
矢継ぎ早に営業サポートを求められ、「あばばばばばば……」となりがちです。
細かい事務作業が得意でな方で、バックアップサポートが好きな方には向いていますが、細かい事務作業が苦手な方や、電話応対が苦手な方には、きつさを感じる可能性が高いです。
不動産業はイメージがブラックできついから、やめとけ
「不動産業はイメージがブラックできついから、やめとけ」と言われることがあります。

確かに……
これは、経験から思い返してみても、否定できません(汗
不動産業界は、離職率が高く、労働時間が長いという現実があります。
また、長時間労働、休日出勤、パワハラ上司、モラハラ野郎、契約に繋がらない業務の押し付け合いなど、いろいろあります。
営業職は、契約成立に向けて夜遅くまで働く日もあり、上司からの「圧」と、顧客と家主との間で右往左往して、白目剥きっぱなしになりがちです。
私が以前いた、とある不動産会社では、

今日はノー残業デーだから、ちゃんとタイムカード切ってから仕事に戻れよ!
みたいな指示がありました。
ブラック企業あるあるですね。きつい。
もし、今から不動産業に転職を考えている方は、入社予定の企業がブラック臭プンプンか否かについて、事前にしっかりとリサーチしておいたほうが良いでしょう。
最近では業界の改善が進んでいる企業も多く、労働環境を見直し、社員の働きやすさを考慮した取り組みを行う企業も増えているので、少し希望もあるといえば、あります。
宅建士の実際の仕事内容は?
宅建士(宅地建物取引士)は、不動産取引に関わる重要な役割を担う専門職です。
具体的には以下のような業務を行います。
業務内容 | 主なタスク |
---|---|
重要事項説明 | お客様との契約時に、物件情報の詳細を説明 ※宅建士の独占業務 |
契約書類の作成 | 売買契約書や賃貸契約書の作成 関連書類の準備 ※契約書への記名は、宅建士の独占業務 |
物件の調査や仕入れ | 登記簿の確認 法的制限の調査 |
営業、接客対応、交渉 | 物件への案内 仲介なら、貸主と借主、双方の条件調整 |
事務作業 | 物件資料や間取り作成 現地の写真撮影など |
クレーム対応 | 問題発生時の対応 |
宅建士の仕事は、単なる事務作業にとどまらず、顧客とのコミュニケーションやリスク管理、法令遵守といった多岐にわたる業務が求められます。
「宅建士やめとけ?」「宅建士きつい?」……構わん!宅建士がおすすめな人の特徴

「宅建士はやめとけ」「きつい」と言われることがありますが、実際には特定のタイプの人にとっては非常に魅力的な職業です。
営業職でゴリゴリ稼ぎたい人
宅建士の資格取得は、営業職で多く稼ぎたい人には向いています。
宅建士の営業職は成果報酬型を採用している企業が多いです。
- 契約1本で○円の歩合手当
- 付帯商品(例:火災保険など)をセット販売したら、プラス○円
……など、契約件数や取引額に応じて報酬が増えていきます。
自分の成果が直接収入に反映されるため、天井のない収入を目指す方にもおすすめです。
接客が大好き、人間が大好きな人
宅建士は、接客が大好きで、人と関わるのが好きな人にはぴったりの資格です。
不動産取引は顧客にとって大きな決断です。お客様との信頼関係を築きつつ、顧客の真のニーズを理解し、最適な提案をする、そのために顧客とのコミュニケーションが重要になります。
また、不動産業界では、さまざまな背景を持った人々と接する機会が多いです。
各人の価値観やライフスタイルに触れ、目の前の人を尊重でき、人間関係を大切にする人には楽しい職場になると思います。
宅建事務として働きたい人
「宅建士はきつい」と言われることもありますが、宅建事務として働きたい人には非常に向いています。
宅建事務は、物件資料の作成や契約書類の整理、データの管理など、細かい事務作業が中心です。
その他、営業職や顧客対応のスタッフをサポートするのが宅建事務の役割です。営業チームや顧客に必要な情報を提供し、スムーズな業務運営を支える業務に喜びを感じる人には適職になるでしょう。
宅建事務の仕事は、営業職に比べて比較的安定しており、長期的に働く環境が整っています。
パートタイムでの宅建事務のポジションは、フルタイム勤務が難しい方や、家庭との両立を考えている方にも適しています。
営業はしないけれども、事務作業に集中して働きたい方にとって、パートとしての宅建事務は理想的な選択肢です。
宅建を使った副業がしたい人
宅建資格は、不動産業以外でも副業に活かせます。たとえば、
- 宅建事務として短い時間、パートタイムで働く
- 宅建関連のブログやYouTubeチャンネルを運営して、土地や物件の解説を発信し収入につなげる
- フリーライターとして不動産関連の記事執筆をする
など、宅建士としての知識を活かしながら副業し、収入源を増やすこともできます。
独立開業し、自分で不動産業をはじめたい人
今後、独立開業して自分で不動産業を始めたい人には、宅建士の資格が非常に役立ちます。
開業主が宅建士であれば、自社の業務運営における法令遵守やリスク管理を直接行えます。
不動産開業における「専任宅地建物取引士の設置義務」も満たせます。
不動産業を営む時は、ひとつの事務所において「業務に従事する者」5人につき1人以上の割合で、専任の宅地建物取引士を設置することが義務付けられています。
金融業や保険業の人
金融業や保険業に従事している人にとって、宅建士の資格は大いに役立ちます。
例えば、金融業の場合は、住宅ローンの相談に加え、不動産の市場動向や物件選びに関する専門的なアドバイスが提供できます。
保険の提案と合わせて、建物と関連性が高い火災保険や自信保険の提案やアドバイスが行えます。
金融業や保険業は、競争が激しい世界です。宅建士の資格を持つことで、競争優位性を確保できます。
ダブルライセンスで宅建の知識を使いたい人
宅建士と、他の資格を組み合わせて、幅広い分野で活躍したい人――ダブルライセンスを持ちたい人に、宅建資格はおすすめです。
例えば、以下の資格との組み合わせで、宅建の知識が活きます。
資格組み合わせ | 活用シーン | 具体的な役立ち方 |
---|---|---|
ファイナンシャルプランナー(FP) | 金融業界でのトータルプランニング | 住宅ローンや不動産投資のアドバイス提供 |
管理業務主任者 | 不動産管理業務の専門性強化 | 物件管理やオーナーへのアドバイス |
マンション管理士 | マンション管理運営の専門家 | 管理規約や住民対応での効果的なアドバイス |
不動産鑑定士 | 不動産評価や市場動向の分析 | 物件の価格査定や投資判断 |
土地家屋調査士 | 土地や建物の調査、測量業務 | 法的アドバイスや調査業務の効率化 |
測量士補 | 土地の測量業務 | 測量業務での法的アドバイスや情報提供 |
司法書士 | 不動産取引の法的サポート | 登記手続きや契約書作成での専門的サポート |
行政書士 | 許認可申請や書類作成 | 不動産取引に関する行政手続きの効率化 |
社労士 | 労働関連のアドバイザー | 労働問題と不動産契約に関するトータルサポート |
簿記 | 経理業務の強化 | 不動産取引に関する会計処理や財務管理 |
資格の勉強が趣味の人
資格マニアさんや、学び好きな方にとっては、宅建士は継続的な学習が楽しめる楽しい学習目標になります。
これは説明不要ですね。
宅建士試験の勉強は、広範囲な法律知識や実務的な内容をカバーします。「学び」自体が楽しめる人にとっては、法改正や新しい知識のアップデートが楽しみとして捉えられるでしょう。
宅建士の勉強に必要な時間は、およそ300時間程度と言われています。
300時間、楽しく学べて、後の人生にも活きる不動産知識が身につくので、資格取得が趣味の方は、迷わずにレッツ・チャレンジです!
宅建:参照サイト