不動産業界で活躍するために必須とも言える宅建士資格。
しかし、「宅建士は食えない」と語る声もあります。一方で、宅建士で安定した収入を得ている人が多いのも事実。
この記事では、宅建士が「食える理由」と「食えない理由」をチェックしつつ、宅建士の将来性や長く働き続けるためのポイントも紹介します。
これから宅建士を目指す方の参考にどうぞ。

●この記事を書いた人
不動産会社に勤務してた人。宅建士。
結論→宅建士は食える。むしゃむしゃ食えるので大丈夫。
宅建士は食える!理由5つ
私(管理人)としては、実際に不動産業界で働いていた経験上「宅建士は、問題なく食べていける資格」だと考えています。理由は次の5つ。
順に掘り下げますね。
宅建士には独占業務があるから、食える

宅建士には法律で定められた「独占業務」が存在します。
宅建士しかできない業務。
宅建士以外が業務にあたると、法律違反になる。
「宅建士にしかできない業務」を具体的に挙げてみます。次のようなお仕事です。
参照:全日本不動産協会東京都本部・(公社)不動産保証協会東京都本部
めちゃくちゃ簡単に言ってしまうと……

契約書の最終チェックで「OK!」と言ったり、お客様に大事な説明をするのは、宅建士以外、やったらダメ」ってことです。
宅建資格を持っていないスタッフ(あるいは、宅建免許を発行していない従業員)が「宅建士の独占業務」を行うと、まぁいろいろと、罰則が課されます。悪質な場合は、宅建業の免許を取り上げられたりもします。
よって「独占業務」をこなす資格を持った「宅建士」の存在は、業務にあたり必要不可欠な存在となるため、宅建士の需要は高く「食える」といえます。
不動産業は「宅建士の配置義務」があるから、食える

一般的に、不動産業者には「宅建士の設置義務」が課せられています。
具体的には、従業員5人に1人の割合で宅建士を置かなければならないと、宅建業法で定められています。
IT重説ができるなど、オンライン環境が整っている場合の例外はありますが、ベースは「従業員5人に1人」の割合です。
不動産業を営む時は、ひとつの事務所において「業務に従事する者」5人につき1人以上の割合で、専任の宅地建物取引士を設置することが義務付けられています。
引用:開業に必要な条件
この人数縛りによって、宅建士の頭数が揃っていないと事業展開もできなくなってしまうので、宅建士の雇用は比較的安定しています。
宅建士は求人が多いから、食える

不動産業界の求人は多く、その中でも「宅建士優遇!」と銘打って応募文を出している企業も頻繁に見かけます。
宅建士の資格は、不動産業界の売買部門だけでなく、住宅メーカーや賃貸仲介業者など、幅広い業種で求められています。建設業、金融業でも宅建士を積極採用する企業があります。
宅建士の求人が多いのは、不動産業界がブラック寄りで離職率が高いから――というのも理由なので、手放しに喜べる感じでもありませんが、求人はたくさん出ているのは確かです。
保険業界や金融業界でも宅建士の知識が活かせるから、食える
宅建士の知識は不動産業界だけでなく、保険業界や金融業界でも大いに役立ちます。
不動産担保ローンや住宅ローンの販売、あるいは火災保険の提案において、不動産に関する専門的な知識が重宝されます。
他業界でもキャリアを広げる大きな武器となるため、宅建士は持っておいて損はないです。
資格手当や昇給で収入アップが期待できるから、食える
宅建士資格を取得しているスタッフに、資格手当を支給する企業も多いです。
月額で数万円支給される企業もあり、長期的に見て収入が大きく変わることから「宅建士は資格手当でも食える」と言えます。
ざっくり勘定で、月額5,000円〜30,000円程度を資格手当としている会社が多い印象
当サイトの別記事から引用|資格の窓
また、宅建資格を持っていると、店長やリーダーに抜擢されやすくなるため、昇級手当や管理者手当も狙いやすいです。
出世を避けたい人には向きませんが、宅建士の資格を生かしてガンガン稼いでいきたい人にはもってこいな「食える資格」です。
「宅建士w食えないwww」と言われる理由6つ
ここからは「宅建士が食えない」と言われる理由を紹介します。筆者の主観も混じっていますが、参考までに。
では、見ていきましょう。
人口が減り、不動産取引も減少するから、食えない

日本は少子高齢化による人口減少が進んでおり、将来的には不動産需要の減少が懸念されています。
総人口は、平成20年(12808万人)をピークに、23年(12783万人)以降は一貫して減少しています。
引用:総務省統計局
特に地方都市や過疎地では、空き家が増加しており、新規の不動産取引が減少傾向にあります。
このような背景から、宅建士の仕事量が減少し、安定した収入を得にくくなる可能性は、確かに考えられます。

過疎化で、空き家だけが増える……
世紀末……
宅建士の資格保持者が増え、供給過多だから、食えない

宅建士の資格試験は毎年1回行われており、その都度、合格者が出るため、宅建資格を持つ人の数は、どんどん増えていきます。
その結果、資格を持つ人の数が需要を上回る「供給過多」の状態が生じる可能性も、あるかもしれません。
宅建士同士での競争が激化するため「宅建士は(将来的に)食えない」と考える人はいそうです。
ただし、これはどの資格にも共通する事項であって、宅建だけに限らないので、あまり考えすぎなくてもいい気はします。
周囲からのやっかみで、食えないと言われているだけ
宅建士の資格試験合格率は、ざっくり10%半ばほどなので「やや難関な資格」とされます。
このことから、試験に落ちてしまった人や受験を諦めた人から

宅建なんて食えないよwww

資格手当で稼ぐなんて、邪道ww
……と、やっかみを受ける場合があります。
たまにホントにいるんですよね。「俺は、資格手当になんて頼らずに、がっぽり稼いでやるZE!!」と言っている人。
こういう輩は、視界に入れずに華麗にスルーしましょう。
仕事がきつくて、離職する人も多いから、食えない
宅建士――というか、不動産業界の仕事は、
- 営業、接客
- 契約
- 資料作成
- 現地調査
など、通常業務に加え、
- クレーム対応
- 売上数字のプレッシャー
といった、メンタル面も削られる業務が待ち受けています。
特に繁忙期は長時間労働が求められるため、体力的にも精神的にもきついと感じる人が多いです。
このため、せっかく宅建資格を取得しても仕事が長続きせずに業界を離れる人が一定数います。その結果「宅建士を取ったけど、食えなかった」と悲しむ人はいます。
宅建士の資格よりも、営業力が求められるから、食えない
宅建士の資格は、不動産業務を行うためのスタートラインに過ぎません。
不動産業界では、営業力が非常に重要であり、いくら資格を持っていても営業成績が振るわなければ評価されない職場が多いです。
営業力やコミュニケーション能力に自信がない人は、思うように収入を伸ばせず、「宅建士は食えない」と感じます。
不動産業界の平均年収は約500万円で高収入ではないから、食えない
宅建士は不動産業界で需要がある資格ですが、必ずしも高収入が保証されるわけではありません。
厚生労働省の統計を見ると、宅建士の平均年収は約550万円程度とされており、他の士業と比較しても、飛びぬけて高収入とは言えません。
平均給与を業種別にみると、最も高いのは化学工業の568万円、次いで金融保険・不動産業の558万円
引用:国税庁
個人の努力や所属企業の規模によって年収が変動するため、一概に「550万が正しい」というわけでもないですが、資格を取っただけでは満足のいく収入を得られないケースもあります。
宅建士の将来性
宅建士は「宅地建物取引業法」という法律に基いた、独占業務があります(>独占業務)。
この「独占業務」以外に、宅建士の将来性を考えてみると……
これらの理由により、将来、宅建士の仕事がゼロになる可能性は限りなく低いです。
AIにはできない仕事もあるため、宅建士は今後も活躍できる
AI技術が進化しても、宅建士が担う業務の多くはAIに代替されにくいです。
現時点で、AIでは不動産の「細かい状況」を把握しきれません。
例えば、賃貸契約では、
101号室は、クローゼットの建付けが、少し悪い
102号室は、事故物件
201号室の住人は、○×▼……(以下、検閲により削除)
A物件の家主は、家賃交渉できる
B物件の家主に相続があった
など、単純なデータ処理だけでは対応できない「人間模様」や「足で稼ぐリアルタイムな情報」を踏まえた提案は、AIには難しいです。
顧客の感情やニーズを汲み取って信頼関係を築く能力も、宅建士の強みとして評価され続けるでしょう。
不動産は生活に必須で、宅建士はなくならない
人口減少や少子高齢化によって、不動産需要の減少は懸念されていますが、家やマンション、アパートが完全になくなる……なんて状況にはなりえません――地球が滅亡しない限り。
住宅の建て替えやリフォーム、相続に伴う売買、都市部での賃貸需要など、不動産を必要とする場面は常に存在します。
国土の有効活用や再開発プロジェクトなど、社会インフラに関連する分野でも不動産の取引が行われるため、宅建士の需要がなくなる状態は考えにくいです。
不動産業以外でも、宅建士の資格は活かせる
宅建士の知識は、不動産業界だけでなく、金融業界や保険業界でも活用できます。
不動産業以外の分野でキャリアを広げられる点も、宅建士の将来性を裏付ける要素です。
長く働ける宅建士で稼ぐために大事なこと

宅建士として長くご飯を食べるには、日々のスキルアップが必要です。
「せっかく合格したのに、まだ勉強を続けるなんて……」とガッカリもしますが、宅建知識を常に更新しておくと、安定して「食える」宅建士として末永く活躍できます。
法改正や、市場の変化に対応する
不動産業界は法改正や市場の変化が頻繁に起こるため、最新の法律知識の把握が求められます。
宅建免許の更新時(5年に1回)に情報をブラッシュアップしつつ、その年その年の法改正をチェックしておきましょう。
ダブルライセンスを取得し、顧客への提案力を強化
宅建士の資格にプラスして、他の関連資格を取得すると、キャリアの幅が広がります。
宅建士と相性の良いのは、次のような資格です。
ライセンス | 役立つ分野 |
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ファイナンシャルプランナー(FP) | 金融商品、不動産投資、資産運用の提案 |
管理業務主任者 | 賃貸物件の管理、オーナーとの契約業務 |
不動産鑑定士 | 不動産評価、価格査定、相続税関連 |
FP(ファイナンシャルプランナー)や管理業務主任者、不動産鑑定士などの資格は、不動産業界での業務に直結もします。
資格を組み合わせれば、お客様により総合的なサービスを提供できるようになり、企業内での評価も上がり、首の皮が繋がりやすくなります。
宅建:参照サイト